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気紛れに書かれる涼宮ハルヒの憂鬱への雑感などなど
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 『分裂』を読んで書いたもの。
 ちょっとした短文ですが、思いっきりネタバレしているのでご注意ください。

 

 K&K


 喫茶店を後にし自宅に戻った俺は、時折隣で泣き声をあげるシャミセンの声をBGMに、ふと今日の出来事について思い返していた。
 面倒なことは考え過ぎない方が良いと思うのだが、現状では面倒な事態がこれ以上ほいほいと発展する可能性はそれほど高くも無さそうで、寧ろ解決の糸口なんてものはすぐ傍にあるわけで、よって、考えたところで不利益なことなど何も無いかも知れない、という俺のちょっとした思い込みにも似た見解が、そんな場所に思考を導いていったのかも知れない。
 今日会った、正確には再会した人物達。
 佐々木は昔からの知り合いだからいいとして、橘京子、周防九曜、藤原の三人。
 このうち九曜については考えるとか以前の問題な気がするし、藤原のことなんぞ考えるだけで気分が悪くなる。ということは、消去法で残るは橘京子の一人だ。
 橘京子絡みでも余り良くない記憶が有ったりする訳だが、実際に会って話してみて感じた余りにも普通っぽい印象ゆえだろうか、藤原よりはまだマシな感じがする。
 もちろん橘京子がやった朝比奈さん誘拐という大罪を許す気は全く無いが、今はその件に着いては保留にしておこう。もし、これはもしもの話だが、朝比奈さんにこの話をしたところで朝比奈さんは怒ったりし無さそうだし、朝比奈さん(大)に至っては、彼女は当然事実を知っているだろうし、そしてそれを「規定事項です」の一言辺りで片付けてくれそうな気さえする。
 さて。
 橘京子についてだ。
 本日喫茶店で一番喋っていた上、俺に爆弾発言を落とした人物。
 古泉の所属する『機関』と敵対する組織の一員で、つまりは佐々木を神と崇める連中の中の一人で、朝比奈さんを誘拐した犯人で……、そのくせ、見た目も振舞いも、どこにでもいる普通の女子高生にしか見えない人物だ。
 出会い方や発言内容はさておいて、ハルヒ絡みで出会ったり再会する羽目になったした特殊属性持ちの人物の中で、嘗てこれだけ普通の人物が居ただろうか。否、居ない。
 橘京子は、拍子抜けするくらいに普通の少女だった。
 割合素直で、健気で、可愛くて、ころころと表情の良く変わる……、どこにでも居る、ちょっと可愛い女の子、という感じだろうか。語る内容がおかしいのはともかくとして、話し方自体は、ハルヒほど一足飛びでもなく古泉ほど回りくどくも無く朝比奈さんほど歯抜けだらけでもなく長門ほど難解でもなく、ついでにいうと朝倉ほど恐怖を誘ってきたり藤原ほどむかついたりもしなかった。ちなみに九曜とか喜緑さんとかは未だに説明をくれたわけではないので省いておく。
 俺はぼんやりと、片手を目の前に持ってくる。
 橘京子と繋いだ手だ。
 僅かだが、少女の細い手指の感触が残っているような気がしないでもない。別にそんなものを感じ取ろうと思っていたわけではないのだが、触覚を断ち切れるわけもないので、そういうものを覚えていたって別段おかしなことではないだろう。
 閉鎖空間。
 俺にとっては人生三度目になるその場所で、橘京子は笑っていた。
 神様がどうの世界がどうのと語る唇の動きは、普通の女子高生が昨日見たドラマや流行のファッションについて語るときのものと、何ら変わらない。その普通すぎる姿に騙されるなんてことはもちろんありえないわけだが、最悪の初対面とは多少印象が変わったのは確かだ。
 佐々木を神様と語る奇妙な少女であることに間違いはないものの、そういう面倒で厄介な四年間を過ごしてきた割には、苦労の跡はともかくとして、人格がどうの、という側面が見えてこない人物。……それが橘京子だ。
 俺は四年前の橘京子を知らないわけだが、賭けてもいい、橘京子は多分元からああいう普通の少女なのだ。
 さて、俺はここで一人の人物を思い出す。
 古泉一樹。我らがSOS団副団長こと、限定的超能力者のことを。
 今更考えるまでもないことだが、古泉の人格というか振舞いには、少なからず演じている部分が存在すると思われる。この辺、橘京子とは対称的と言えるかも知れない。
 この二人は似た道筋を辿ってはいるものの全く事情が同じというわけでもないだろうし元の性格の違いなども有るだろうからそれはそれで別におかしくはないと思うのだが、気になることは有る。
 橘京子は、どうやら割りと常識人のようで、本気で世界の行く末を案じている様子でも有るのだが、何故か現在の自分の立場に対する悲観的な部分という面を全く見せて居ない。あれだけ素直さと健気さを全面に出しているのに、そういう部分が出てこないというのは、不自然と言えば不自然だ。ここからは俺の推測になるが、多分、力とやらを与えられたときに『そういうもの』として、自分の立場に対する疑問というものを排除されるように仕向けられたのだろう。そして橘京子がそうであるということは、古泉の事情も似たようなものなのだろう。
「くそっ……」
 この一年間、相方的立場に居る古泉に向かって、訊けそうだけれど訊け無かったことというのが幾つか有る。その中の一つに、現在の自分の立場に対する疑問や不満はないのか、という項目も含まれている。無駄だと思っていたから訊かなかったし、訊かれたくないことなんじゃないかとも思っていた。
 古泉自身が以前『機関』の中にも懐疑的な連中が居ると言っていたから、認識という点全てが書き換え、あるいは強制されているということは無さそうだが、橘京子の振る舞いを見る限り、能力者達の意識の中に少なからずそういう側面が存在するということは確かなのだろう。
 そう……、訊いていない以上、古泉の答えは分からない。
 けれど。
 橘京子がそうであるように、古泉もそうだと言うのならば、最初から答えなどないのだ。
 疑問は与えられた力に埋もれ、不満は現実に巻き込まれて消える。
 ……そういう風にして、古泉一樹も橘京子も、他の能力者達も過ごして来たのだろうか。
「何だよ、それ……」
 答えは無い、これはあくまで俺の推測、想像の域を出ないと思うのに、一旦回り始めたそれは俺の頭のどこかにこびりついてしまったのか、簡単に消えてくれそうに無かった。


 京子話に見せかけた古泉話? さて、どっちなんでしょうね。
 時系列的には、bの4と5の間ですね。
 何か纏まってないですが一応ここで終わっておきます。
 古泉と京子(と、キョン)については色々思うところが有るのですが、その辺りについては『驚愕』待ちかなー、という感じです。

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