忍者ブログ
気紛れに書かれる涼宮ハルヒの憂鬱への雑感などなど
[90] [89] [88] [87] [86] [85] [84] [83] [82] [81] [80]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

これも古みくSS
あとでまとめて加筆してサイトにアップしなおします。




 わたしの目の前で、古泉くんがパズルを組み立てています。
 長い指先がピースを手に、机の上をうろうろと。
 わたしはただ、それを眺めています。
「……どうしましたか?」
「あ、何でもないです」
 古泉くんが不思議そうな顔をしたので、わたしは首を振りました。
 何でもない、なんてことは無いのと思うんですけど、でも、わたしは伝える言葉を持っていませんから。
 だから、こうして眺めているんです。
「あの、邪魔でしたか?」
「別に平気ですよ」
 古泉くんが、大丈夫ですよ、とでも言いたげな表情になりました。
 こういう表情が見られると、わたしはほっとするんです。
 古泉くんは何時も良く笑っていますけど、その笑顔にも、ちゃんとバリエーションが有るんですよ。……今は、嬉しいときなのかな。
「じゃあ、暫くこうしています」
 わたしはそう言って、もう一度視線を古泉くんの手元に注ぎます。
 ううん、手元と顔の辺りを行ったり来たり、と言った方が正しいかも知れません。
 何だか不思議……、何か特別なことが有るわけじゃないのに、わたし、今とっても幸せな気分なんです。
 ああ、違いますね。
 特別なことが何も無いからこそ、わたしは、幸せなのかもしれませんね。
「あ、お茶無くなっちゃいましたね。……お代わり、入れてきますね」
「お願いします」
 そう言った古泉くんの笑顔を見て、思わずわたしも頬が緩みそうになります。
 緩みそう、じゃなくて、本当に緩んでいるのかもしれませんけど……、それでも、良いですよね。そのくらい、わたしにも許されますよね。
 わたしは椅子を立ち上がり、お茶を入れにいきました。
 何時ものようにお湯を沸かして、茶葉を準備して……、一番美味しい温度と時間を見計らって、美味しいお茶を入れてあげるんです。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
 わたしの入れたお茶を、古泉くんが受け取ってくれます。
「うん、美味しいですね」
 何時もながらの爽やか笑顔が今日は二割り増しに見えるのは、きっと、わたしの気のせいじゃないですよね。……そうですよね?
「良かった……」
「茶葉、変えましたか?」
「あ、はい……、分かるんですね」
「そんなに詳しくは無いんですけどね」
 古泉くんの笑顔が、少しだけ苦いものの混じる表情になります。
 どうしてでしょう……。あ、わたしに申し訳ないとか思っているんですか? ううん、そんなこと気にしなくて良いんですよ。だってこれは、わたしが好きでやっていることなんですから。うん……、分かってもらえた方が嬉しいかな、とは思いますけど。
 でも、そういうのって、押し付けることじゃないですよね。
「……朝比奈さん?」
「あ、すみません、わたし、ぽーっとしちゃって……」
「大丈夫ですか?」
「は、はい、大丈夫です……。大丈夫です、から」
「……無理はしないでくださいね」
「はい……」
 別に、無理なんてして無いんですけど。
 確かに、ほんの少しだけ、その、ちょっと、考え事をしていたりはしましたけど……、でも、別にそれは、無理なことじゃないんです。
 ただちょっと、ほんのちょっとだけ……、ちょっとだけ、その……、嬉しかっただけなんです。……きっと。
「パズル、楽しいですか?」
 何時の間にかパズルに戻っていた古泉くんに、わたしはふと気になって訊ねました。
「ええ、楽しいですよ。……一つ一つのピースがどこに嵌るものなのか考えながら手を動かしていると、余計なことを考えずに済みますしね」
「余計なこと、って……」
「そうですねえ……。例えば、かわいい女の子と二人きりというこの状況を、どう活用しようか、何て辺りでしょうか」
「こ、古泉くん……」
 な、な、な……、何を言っているんですかあ!
 そ、そんな、そんなさらりと……、さらりと、そんなことを言わないでください。
 わたし、わたし……、どんな顔すれば良いか、分からないじゃないですか。
「……冗談ですよ」
「冗談、って……」
「……そういうことにしておいてください」
「……」
 そういうことって……、そんなの、そんなの……、ずるい、ですよ。
 そんな言われかたしたら……、わたし、わたし……、期待しそうに、なっちゃうじゃないですか。
 駄目なのに……、そんなの、駄目なのに。
「パズル……」
「どうしました?」
「わたしも、やってみたいなあと思ったんです」
 うう、駄目なんですよ。
 駄目なんです……、それは、分かっているんです。
 でも、でも、
「おやおや、それはまたどうしてですか?」
「……パズルをしていれば、隣に居るカッコいい男の子をどうやって口説き落とせるか、考えなくて済むからです!」
 言われっぱなしは悔しいので、わたしは思いっきり大声で、古泉くんに言い返すことにしました。
「そ、それは……
「……今度、一緒に買いに行ってもらえませんか? 初心者のわたしでも出来そうなもの、選んでくれると嬉しいんですけど……」
「……了解しました」
 古泉くんは、ちょっと困った顔になったものの、すぐに笑顔になって、わたしの申し出を受け入れてくれました。
 ありがとう、古泉くん。
 わたしは……、ちゃんとしたことは何も言えないですけど、でも、そんなあなたが居てくれて、とっても幸せなんですよ。

 
 
 
 

PR

コメント


コメントフォーム
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字


トラックバック
この記事にトラックバックする:


忍者ブログ [PR]
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
[01/19 七原悠衣]
[01/19 裏星]
[01/06 かい]
[01/06 七原悠衣]
[01/06 かい]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
悠衣
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索