いきなりはじまる流され古泉なキョン古
……この状況はなんだ。
休日の朝、いつもより少し早く起きた俺は、ベッドの中に自分以外の住人が居るのに気づいて驚愕した。
シャミセンならいつものこと、妹だとしたらやや問題有りだが叱れば良いだけだ。
問題は……その相手が妹を含めた俺の家族もとい一つ屋根の下で暮らす相手などではなく、どちらかというと、何でお前が! と言いたくなるような相手であるということだ。
なあ、古泉。
何でお前、俺のベッドの中にいるんだ?
「むぅ……」
うわ、寝返りをうつな、ただでさえ狭い俺のスペースがさらに狭くなるじゃないか。……寧ろ何で夜のうちにベッドから落ちなかったのか不思議なくらいだけどさ。
ってお前、ずれた布団の下は何も着てないのかよ……いや、俺も似たようなものだけどな。
ざっと部屋を見渡してみれば、適当に脱ぎ散らかしたままと思われる二人分の寝まきと下着が転がっている。
記憶を辿る限り、あれは俺と古泉が着ていたものに間違いなく、ということは、今、俺も古泉も何も着て無いというわけで……
……ちょっと待て。
あまりと言えばあまりの状況に、俺の思考は一旦停止しかけた。……が、ここで止めても疑問だけが残るということに気づいてゆっくりと活動を再会する。
昨日……、そう、昨日のことだ。
昨日は確か両親が旅行、妹が友人宅へ泊まりで出かけるってことで、俺が留守番ってことになってたんだよな。
で、一人じゃなんだからってことで、谷口と国木田を誘って……ああ、そうだ、そこでハルヒに言われたんだよな、古泉くんも誘ってあげなさいよ、って風にな。
谷口は少し嫌がったが国木田はあっさり了承の姿勢を見せ、俺は少々引っかかりを覚えながらも古泉を誘い……で、この微妙なメンツでのお泊まりとなったわけだ。
微妙と言っても、別に何が有るというわけでもなく、それなりに話をして適当に出前をとって食べて……そろそろ日付が変わるなという頃に、谷口が持ってきた荷物の中身から、酒を取り出したのだ……。
酒のせいで酒が入る前の記憶が曖昧になっているが、酒が入った後は当然それ以上に記憶が朧気だ。
酒を持ち込んだ当人である谷口が早々に潰れたこととか、俺も随分酔っぱらってたこととか、古泉と国木田が何か話していたような……内容が思い出せないな、たいしたことじゃないとは思うが。どっちがどっちを介抱するか、とかだったか?
それで、俺と古泉が同じ部屋で寝ることになり……そこで、口論になったのだ。
幸か不幸か俺はその内容を覚えてない、ただ、随分つっこんだことと言うか、酷いことを言ったような気がする。古泉の反応は……これも、思い出せない。
ただ、苛立っていた俺はそのまま勢い任せに古泉の服を脱がし……
「げっ」
段々と蘇ってきた記憶が、俺の思考をぼやけさせていた酒気を振り払う。
そう、俺は……、古泉としたんだよな、英語で、性別を表すのと同じ単語で表現する行為を。
「嘘だろう……」
俺は天を仰いだ。
が、そこには見慣れた天井が有るだけだった。
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